「また、必ず会おう」と誰もが言った。を読んだ感想
喜多川泰
あらすじ
17歳の少年が主人公。
口ばかりで、去勢を張って、勘の鋭い同級生に嘘を見破られそうになり、
その嘘を守りたいがために、熊本から東京になけなしのお金で飛行機の往復チケットを取って旅に出た。
不慮の事故が重なり、帰りのチケットがぱあになってしまう。
帰りの飛行機のチケットを買い直すことも、ホテルなどに宿泊するためのお金もない。
くだらない嘘を守るために親にも嘘をついてきたので、親にも連絡ができない。
そんな状況で空港から動けず、夜になってしまい、そこで働くおばさんから声をかけられる。
藁にも縋る思いでおばさんに事情を話すと・・・
感想(ネタバレ含む)
そこから思いがけず繋がる、出会いと成長のストーリーになっている。
この主人公がついた嘘というのは
夏休み直前のとある日に、
主人公がクラスメートたちの前で「ディズニーランドに行ったことがある」っていうものなんだけど、
クラスメートの一人、主人公が見えを張っていることをいつも疑ってかかるような男子生徒がいて、
その人が言うことは意外と図星。
でもそれが悔しくて、主人公は高校生男子にして、ディズニーランドに行ったのは去年の夏休みで、
夏休み明けにその時とった写真を証拠として持ってくる!と意気込んだ。
そして嘘の証拠だけど、つじつまを合わせてそのクラスメートの鼻を明かそうと、頑張って一人でディズニーに行き、写真をとってきたら「去年の写真だよ」とかいう作戦をたてて、なんとかしようとするところ、
ばかだな~って思いつつ、ちょっとだけわかる。
私は今はそういうことはしないけど、あとが面倒くさいからという打算が身についただけで、大人になったというわけではない。
高校生の嘘ついた一人旅なんで、なけなしのお金で予算ぎりぎりだったから、帰りの飛行機をトラブルで逃したらどうにも動けなくなって(笑)
嘘の授業料も高いけど、ピンチすぎるよね。
そのくらいのショックがないと気づかないものなのかも。
そして、おばさんが助けてくれる時に、ただお金を貸すだけじゃ成長しないから、課題を一つ与えて・・・というところから面白くなってくる。
そこまでは、嘘のために起こったハプニングにハラハラして胸が痛いほど。
そして、与えられたり、気づいた課題を考え、こなしていくうちに、
主人公の男の子がどんどん成長していくはなし。
成長していく過程で、大事なこととか、
特に、人とのコミュニケーションについてを学んでいく話だった。
高校生の男の子が体験していく話なので
「若い子ってこうだよな」「高校生の時に同じように思ったな」
という箇所はもちろんあったけど、
40になろうという私にも、
もっと自分の感情に素直になりつつ、相手とのことを考えながら行動してもいいんじゃないかなって思う部分もあった。
それと、いろいろ主人公の高校生を助け、教えていく周りの大人は、
誰も完璧なんかじゃなくて、
その人自身も、ほころびがあったり、
主人公、17歳の男の子を見て逆に学び取っていく様子もあって、
そういう部分も、読んでいて気持ちのいいものだった。
自分がそういう旅をして、自分がここまで体験してきたっていう錯覚が見られるほど、共感しちゃいました。
もうちょっと若いときに読んでたら違ったかな~
でもアラフォーの今読んでも、
まだまだ人生勉強に間に合う本だった。
息子のことのような、自分のことのような、
いろんな立場から読んでいた気がする。
自分の考え方の偏りに気づくことや、
恐れずに挑戦することの大事さなど、
改めて、気づかされました。
最後にちょっと意地悪なことを言うと、
「必ずまた会おう」って、
数年後にもう一度会った時に、同じ気持ちでいられるのかな。
同じじゃなくてもいいけど、会った時にどう感じるのか、興味を持ったということ。
これは、小説ではわからないかな・・・